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平成28年 (2016年) 1月 8日

教育ちょっといい話 第157回

山口県立田部高等学校 校長 吹屋 哲夫

ランウェーデビュー

田部高校に赴任してしばらくしたある日、総合生活科長と3年生男子生徒が校長室を訪ねてきた。10月に開催される「ねんりんピック ファッションショーコンテスト」のモデルになってほしいとのこと。半年も先のことなので、軽い気持でその場で快諾した。第1次審査で入選した3年生男子の作品「侍デニムPARTⅡ〜ちょい悪オヤジ向け〜」を着るのにふさわしい人物であること、ねんりんピックが2学期中間考査と重なり、生徒の参加も難しいことが依頼してきた理由のようだ。

夏休みまでは特に何も動きはなく、高をくくっていたが、9月に入り、学校では帽子、はかまなどのサイズの調整、ねんりんピック事務局からはウォーキング練習の案内が届き、がぜん慌ただしくなってきた。ただ歩くだけと思っていたランウェーも、そういえばリズムに合わせてさっそうと歩き、決めポーズなんかもいるのかなと考えると、音楽にも体育にもセンスのかけらもない私にそんなことができるのかと不安になってきた。事前のウォーキング練習では、意識しすぎて右の手足が同時に動く始末。

当日は午後の本番に備えて9時前に会場入りし、まずはメーク室で、生まれて初めてのプロのスタッフによる、髪、顔の手入れ。そして待つこと3時間、いよいよ本番。速さ、決めポーズの時間を意識して、ランウェーをまるで学校の廊下を歩くように普通に歩いた。

作品は、伝統の中にも奇抜さがあり、モデルの内なる葛藤を問題とせず、3位相当の奨励賞を受賞した。田部高校に赴任した年にたまたまねんりんピックがあったこと、そして男性中高年モデルが必要であったことなど、多くの偶然が重なり、私は「ランウェーデビュー」を果たした。ちょい悪オヤジ向け作品を制作してくれた生徒と指導に当たった先生方に深く感謝。次にこれほどの偶然が重なるのはいつになることやら。

 

(平成27年12月投稿)

 

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