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防府市立松崎小学校 校長 藤田 健二
正門前の道路を箒で掃いていたら、散歩中とお見受けするご婦人と目が合った。「いつもきれいにして下さって、有り難うございます。校舎は建て替わり、昔の面影はないけれど、ここは、死ぬまで私の母校です。」思わず目頭が熱くなった。学校は、その人の現在だけではなく、過去も未来もお預かりしているのだ。齢だけは積み重ね、定年退職が他人事でなくなってきた今、先輩から学んだ教育への熱い思いを見える形で伝えたい。具体的な方法論は次の世代に委ねるとして。
様々な課題が山積する中、「子どもや教職員が自分や自分の学校を愛せる学校づくり」を目標に掲げ、現任校に赴任して2年目。成果は上がっているのか不安になり、教職員や保護者の皆様、地域の方々に、「どうですか?」と尋ねて歩きたい衝動に駆られることがある。
私は、日中、殆ど校長室にいない。晴耕雨読、事務処理は夜か雨の日、土曜・日曜と決めている。本年度、環境の美しさとともに言動も「美しい学校」づくりを目指したいと、学校経営案を見直した。気持ちのよい挨拶ができる、トイレのスリッパが揃えてある、困っている人がいれば声をかけるなど、「思い」を「思い遣り」として見える形にできる「強く優しい」子どもに育ってほしいという願いからだ。そのこともあり、日中は外に出て環境整備に励んでいる。
「校長先生、手伝う。」と3年生の女の子。夕方、スポ少の練習に来て、薄暗くなった体育館裏に私を見かけ、剪定後の葉っぱを集めてくれた。その横から、「何しよるん。手伝う。」と1年生の男の子。朝の校内巡視のとき、教室内で騒いでいたのを叱った子。これだから教師は辞められない。背中越しに、「校長先生は本当に学校が好きなんだね!」の声。最近、何だか、そういった声をかけてくれる子どもたちや保護者の方が増えた。「そう言えるあなたの方が、学校が好きなんでしょ。」と心で呟く。思いは伝わるものか、伝えるものか。この職業を選んで悔いなし。
(平成23年7月投稿)
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