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山口県立周南総合支援学校 校長 河井 正敏
教師であれば誰もが思っていること、それは、「このことを、こんなふうに教えたい(伝えたい)から教師になった」という思いであり、味わいたいのは「その思いが達成できたときの充実感」であろう。そして、教師の「思い」が思うように達成できないとき、悩み苦しみながらも解決しようと努力する。この当たり前のような教師の「教えたい思いや心」に火をつけるのが、児童生徒の「学びたい」という思いであることは言うまでもない。「学びたい」という思いに触れるたびに教師は励まされ、授業に、進路指導に、部活動に精を出す。
私が最も「学びたい」という思いに触れたのは、平成18年、ある定時制高校でS君と出会った時のことである。S君は当時、定時制高校3年生。あと2年学び続けると高校を卒業できる。彼は卒業後、専門学校に進学し、一級自動車整備士の資格を取るという夢をもっていた。S君の家庭は経済的に厳しく、専門学校に進学するために必要な学費や生活費を定時制高校に通いながらアルバイトで貯めたお金で賄おうと考えていた。彼がアルバイト先として選んだのは、「料亭」。店長さんに気に入られたらしく、アルバイトでありながら、猛特訓を受け、なんと調理師の免許を取得したのだ。将来を調理師の道へ切り替えそうなところだが、自動車整備士になりたいという彼の夢は変わらなかった。理科が苦手な彼は、しばしば私に補習を求めてきた。彼の学ぶ意欲にあふれた目は、私の心を燃えさせた。調理師の資格を取ったS君、一級自動車整備士になることが決して夢ではないことは、誰の目にも明らかだった。
「一人ひとりの夢の実現」を目標に掲げる本県において、希望に燃える生徒の「生きる力」を感じながら、教師としての心が燃えた一時であった。
(平成24年7月投稿)
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