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山口県立岩国総合高等学校 校長 中津 寛純
盆だというのに、AO入試を控えた生徒が校長室に面接練習にやってくる。受験生は大変だ。
AO入試と聞くとこんなことを思い出す。保育士志望のある女子生徒のことである。普段から明るくてまじめな生徒だったのだが、いざ面接練習となると緊張して、体中から汗を噴き出し、質問に対する応答は支離滅裂でどうにもならない。結局、何度練習をやってもうまくいかず、経験を積むだけでもよいかという思いで本番に送り出した。
面接試験から帰ってきてすぐに、聞かれた内容やどんな様子だったかを聞いてみたが、案の定緊張して記憶が定かでないという。ただ、これだけは覚えていますと言って報告したのが、面接が終わって椅子から立ち上がったら、椅子が自分の汗でベタベタになっていたので、ハンドタオルを取り出して、すみませんと詫びて、きれいに拭いて退出したということだった。結果は、合格であった。
その後、結婚して家族で我が家に遊びに来るようになった頃、こんなことがあった。接触不良で困っていたトイレの電灯のスイッチが、いつの間にか具合が良くなっているのに気づいた。これまた教え子でもある彼女の夫が、訪問時、工具を持参してさりげなく修理をして帰ったということを、後日、彼女から聞いた。
このような人間を育てるにはどうすればよいのだろう。私の教員生活、ずっと考え続けていることの一つである。
(平成25年8月投稿)
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