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宇部市立西岐波中学校 校長 松嶋 伸幸
9月1日、防災の日として全国各地で様々な訓練やイベントが実施された。
本校では、学校防災総合対策事業として「避難所生活体験活動」を実施するため、本年4月から宇部市、宇部市教育委員会、西岐波校区自主防災会、小・中学校関係者によるプロジェクト委員会を発足させ、8月末の実施に向けて検討を重ねた。
西岐波校区は平成11年の台風18号による高潮で大きな被害を受けており、この「避難所生活体験活動」は、その高潮を想定し、避難所に指定されている小学校を会場として宿泊体験や炊き出し等を行い、児童・生徒の防災対応力の向上をめざして行う予定であった。特に、当時の様子やエピソード、安全確保についての体験者による講話を、語り継ぐべき貴重な教材として準備していた。また、学校が避難所になることについて、自分の体験からぜひ確認したいことがあった。
平成17年、台風14号による錦川の氾濫で流域が災害に見舞われた。当時勤務していた学校は、被害は免れたが学校が避難所になった。午前0時頃、呼び出しを受けて学校へ向かう途中、近くを流れる川は氾濫寸前で、滅多に目にすることのない光景に恐怖を感じた。到着すると、続々と避難される地域住民の方々で混雑していた。集まった教職員で役割分担をするとともに、学校は海抜が低く、避難場所の体育館では危険と判断し、校舎を開放して2階と3階に避難者を誘導した。
しばらくして人数把握の指示が出たが、これが大変であった。体育館であれば人数確認や避難者への情報伝達は容易である。しかし、校舎内は教室や廊下、階段など、避難者がいる場所が多いうえ、避難者の出入りがあるため、数名で分担しても正確な人数を把握することは困難であった。また、どの地域から避難されているのか情報が不十分であったため、避難してくる生徒の確認など到底できなかった。数時間が経過しても市当局からの情報が入らないため、避難者からの質問にも答えられないし、その後の対応も分からなかった。そのうち避難者の中で、「水位が下がり始めたからもう大丈夫だ」という不確かな情報が回り始め、避難された方が帰宅されるなど、多くの課題が残る避難所経験であった。
今回は、その経験を活かしつつ、学校が避難所となった際のシミュレーションができることを期待していた。残念ながら直前に発生した台風15号の接近により実施はできなかったが、プロジェクト委員会を重ねたお陰で、市、市教育委員会、自主防災会、学校の関係者それぞれの役割分担や必要な物品、懸念される課題等が共有できたことは、大きな収穫であると感じている。異常気象による豪雨や地震など、いつ、どこで、どのような災害が発生するか予期できない状況である。万一に備えて対応力を身に付けることができるよう、様々な視点から防災について考え、訓練しておきたいと思っている。
(平成25年9月投稿)
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