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防府市立佐波小学校 校長 岡野 富司雄
私の家は、田舎のよろず屋です。お中元やお歳暮の時期になると、家の手伝いをよくさせられました。手伝いを始めたのは小学校3年生の頃です。それまでは、毎年、弟妹と一緒に母親の実家にお盆やお正月が来るまで預けられていました。
私の家はよろず屋ですから、お米や醤油はもちろん、お酒やたばこ等の嗜好品も売っていました。
お中元の多くは、ビールでした。昔は、今のような缶ビールが中心ではなく、瓶ビールが中心で、半ダースや1ダースのカートン(箱)につめて配達をしていました。 配達をするには、箱詰めの作業をしなければなりません。箱を組み立て、瓶ビールを1本1本詰めて、のしを貼るのです。最初にこの作業をする時に、瓶ビールを1本1本拭いて入れるように父親から言われました。私はこの作業の意味がよく分かりませんでした。箱に入っていて、中が見えないのにそこまでしなくてもいいのではないかと思っていたのです。
1日に40箱から50箱の箱詰めをしないといけないので、私が飽きてしまって、いい加減に拭いて入れていると、父親から厳しく叱られました。「お客さんは箱を開けて、瓶を取り出してそのまま飲むのではない。冷蔵庫に入れて冷やしてから飲まれるんだ。だから、きれいにしておいてあげるのが大切なんだ。お前は、お客さんに拭かせる気か。見えないところに手間をかけることがお客さんから信頼を受けることになるんだ。それでお前は御飯が食べられているんだ。」と厳しく言われたのです。
私は、小学生ながら、商売って大変なのだなと思いました。
教員という職について、不十分な点も多くありましたが、自分なりに「自分がやるべきこと+一手間(できる範囲で)」を実践しようとしてきたつもりです。
今、学校の経営に携わる中で、教職員によく話すのは、「子どものためになっているか」「説明責任が果たせるか」という2つの視点を持つことの大切さについてです。このような話を毎週末の終礼でするとともに、文書にして渡しています。みなさんの一手間は何でしょうか。
(平成25年10月投稿)
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