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山口県立華陵高等学校 校長 檜垣 英夫
グローバル人材に求められる資質能力として、「豊かな心」「語学力」「異文化理解」そして、「郷土の伝統・文化の理解」などがあげられるが、郷土の伝統・文化を理解し、継承する態度を育てるためには、何が必要なのだろうか。
本校が位置する下松市花岡地区では、毎年11月3日に「稲穂祭」が開かれ、その一環として、「きつねの嫁入り」行列という伝統行事が行われる。行列の最後に、地域の人々が、自作のみこしを担いで練り歩くといったものである。
9月の学校祭で、「きつねの嫁入り」を題材とした写真展と講演会を実施した。写真を見て講演を聴くことで、この伝統行事に対する理解が深まった。しかし、継承する態度の育成にまで及ぶかは少々疑問が残った。
その後、「きつねの嫁入り」にみこし隊として出場してみてはという声もあがり、参加してみることになった。みこしの製作はもちろん、担ぐのも初めてということもあり、地元の方に何度か来校していただき、みこしの作り方、掛け声のかけ方、錬り歩き方、回転の仕方まで懇切丁寧な指導を受けた。
このような指導の成果もあり、祭り当日は、華陵高生の元気のよい掛け声が旧花岡街道に響き渡り、地域の方々の「がんばれ」の応援・励ましの言葉が相乗効果となり、「華陵みこし」は一層元気づき、宙を舞った。
「わっしょい」の掛け声を最初にあげるのは、陽気なイタリア人女子留学生の役目。きつね化粧を施すボランティアにも参加したフィンランドの留学生も加わり、華陵みこしは、和と洋が絶妙に融合して、街中を元気に練り歩いた。担ぎ終わった後は、日頃お世話になっている地域の人々への恩返しをと、参加者全員で通りの清掃活動に当たった。
この祭りへの参加を通して、地元花岡の伝統・文化を理解し継承しようとする態度のほかに、「わっしょい」の語源とも言われている「和をしょう(背負う)」姿勢、すなわち、思いやりや感謝の心も育ったように思う。
教職員も含め総勢55名。この日、参加者たちは、「来年も」という思いを胸に、真のグローバル化に向けて一歩踏み出したような清々しい気持ちで祭り会場を後にした。
(平成26年12月投稿)
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