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萩市立むつみ小学校 校長 三輪 みゆき
「せわぁない、せわぁない。」NHK大河ドラマ「花燃ゆ」でよく耳にする言葉である。
悲しげな様子の「文」を母親「滝」が笑顔いっぱいで迎える場面の「せわぁない」は、とても温かく心に響く言葉である。「せわぁない」とは、〜だいじょうぶ・気にすることはない・なんとかなる〜という意味の萩の方言である。
昨年の秋、校長室の机上に一通の手紙が置いてあった。差出人の名前に心当たりがないが、よく見ると名字の横に旧姓が記されている。フルネームを目にした途端、30年前のあの幼顔がよみがえってきた。下関で二校目に勤務した学校で、初めて1年生の担任をした時の教え子である。30年の時を経て、私の居場所を見つけてくれたこと、さらに手紙に、「先生からかけていただいた言葉で、今の自分があります。」と書かれていたことに感激した。当時の彼女はすぐに泣き顔になる子で、特に、遠くの家に一人で帰るときは、毎日のように不安げに眉をひそめていた。そんな彼女に、担任の私は、「だいじょうぶ、だいじょうぶ。」と言いながら、頭をなでて見送っていたという。
30年前の言葉を、今もずっと忘れずにいてくれたことを心から嬉しく思った。
実は、私にも忘れられない言葉がある。それは、私が初めて教頭職に就いた時のことである。慣れない業務の中でミスも多く、反省の毎日であった。
そんなある日のこと。地域の見守り隊長さんに、集団下校時刻の変更の連絡を忘れて、厳しいお叱りの電話が、校長室にかかってきた。「また、やってしまった。」と自責の念でしょんぼりして校長室を訪ねた。さぞかし叱られるだろうと覚悟していたが、校長先生から意外な言葉をかけていただいた。
「だいじょうぶですよ。後で、私が連絡しておきますから。」「そんなにがっかりしないで。これからも、三輪教頭だからこそできることを見つけて頑張ってください。」と。胸のもやもやがスーッと晴れていったことが今でも鮮明に思い出される。
今、校長として学校経営に携わる立場となり、「むつみ地域だからこそできる学校経営」を目指している。今後も、明るく元気で気持ちよく仕事ができるような環境をつくり、教職員一人ひとりのモチベーションを高めるための「わたしらしい言葉かけ」ができるようさらに努力していきたい。
(平成27年2月投稿)
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