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山口市立平川小学校 校長 木下 満明
校庭の桜のつぼみが膨らみ、春がもうすぐそこに来ていることを知らせてくれています。
3月19日は本校の卒業式です。今年度は、164名の6年生が、通い親しんだ学舎を巣立ち、中学校へと進学していきます。
卒業式の中で、「伝統を受け継ぐ」という言葉をよく耳にします。もちろん、各地域や学校で異なるのでしょうが、受け継ぐべき伝統にはどのようなものがあるのでしょうか。
私は、毎朝、校門の前で登校する子どもたちを迎えています。中学校が隣接しているので、たくさんの中学生も私の前を通っていきます。そこに平川地区の受け継ぐべき素晴らしい伝統があります。
それは、中学生が、小学校前の歩道(約300m)では自転車を降り、押して歩いてくれていることです。小学生の安全を考えてのことだと思いますが、どの中学生の表情を見ても、誰一人として、それを「させられている」といった様には見えません。平川の子どもにとって、「小学生が通るのだから、中学生が降りて一緒に押して歩くことは当たり前」なのです。
自転車を押しているからでしょうか、小学生と一緒に話をしながら登校してくれる中学生もいます。低学年の子どもにとって、中学生のお兄さんやお姉さんと一緒に登校できることは心強いでしょうし、高学年の子どもにとっては、中学校の話を聞くことができて、いい時間となっているのではないでしょうか。
平川地区に住んでいる人にとっては、当たり前のことなのでしょうが、初めて平川小に来た私にとっては、輝いて見える自慢の光景です。
「させられるのではない。してもらったことを自分も返すだけ」
この当たり前のことを当たり前に続けることが、思いやりの輪を地域全体に広げていくことにつながると信じています。
(平成27年3月投稿)
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