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萩市立大井小学校 校長 伊勢屋 次朗
「『人の足元を見る』という言葉を聞くけれども、これがどういう意味かお前は知っているか。」と今は亡き父に教員になってから問われたことがあります。何かの話の弾みの中でのことでしたが、その時父に諭されたことが強烈に今でも印象に残っています。「人と出会ったときにまず普通は相手の顔の表情や服装を見るけれども、顔や身なり以上に、その人がどんな靴(履き物)を履いているのかということが大切だという意味なのだよ。だから、特に人前に出るときはきちんと清潔に、革靴の場合はちゃんと磨いておく必要があるのだ。」といった内容の話だったように記憶しています。
なぜ、こんなことを思い出したかというと、福栄中の体育館で行われた青少年劇場「電子オルガンコンサート」に出演されたある演奏家のお話を聞いたのがきっかけです。当日は、このイベントの当番校に勤務していたことから、始めと終わりに挨拶をする必要があり、その挨拶の内容を考えるため、一生懸命にその方のお話や解説をメモする必要がありました。ですから、余計にその演奏家の話に感動というか感銘を受けたせいもあります。
当日、その方は蒸し暑い体育館という最悪のコンディションの中にもかかわらず、普段東京等で行われる御自分のコンサートと同じ舞台衣装である、かなり高級な(?)タキシードと蝶ネクタイ姿で演奏に臨まれました。
「せっかく僕のコンサートを聞きに来ていただいたのだから、きちんとした服装で、きちんとした手抜きのない自分の最高の演奏を聞いて楽しんでもらいたい。だから、身構え、心構えのために、服装に対して今日もきちんとしてきました。」というようなお話でした。さすがに、プロですね。すぐに私は足元に目をやりましたが、ピカピカに磨かれた黒エナメルの素敵な靴を履いておられました。
教員に成り立ての頃、スーツ姿に足元は「運動靴」というスタイルで出張等に出かけていた時期がありました。今は、もう絶対そんなことはしませんが、そのきっかけとなった亡き父の言葉を思い出させてくれた出来事でした。
(平成23年4月投稿)
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