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平成29年 (2017年) 9月 6日

教育ちょっといい話 第174回

山口県立大津緑洋高等学校日置校舎 副校長 別府 静二

 コミュニケーションの前に

私は、これまで幾つかの高等学校や中学校でソフトテニスの指導をしてきました。学校によっては、選手が私の話すことを熱心にメモしたり、顧問や保護者が私の指導の様子を動画に記録したりしていました。指導に行くたびに選手達の動きが良くなり、目の輝きも増していきました。それが嬉しくて、私は選手達にもっとテニスの楽しさを伝えたいと思いました。

初めて指導する際、私は、まず選手達に「ダブルスで大切なことは何ですか。」、または「ペアで大切にしていることは何ですか。」と問いかけます。すると、選手達は決まって「コミュニケーションです。」とすぐに答えます。「では、あなた達ペアにとって、コミュニケーションとは何ですか。」と尋ねると、少し間を置いて「励まし合い」や「作戦の確認」などの答えが返ってきます。

確かに励まし合いや作戦の確認は必要です。しかし、私はコミュニケーションの前に絶対にしなければならないことがあると思います。それは、パートナーの観察です。もし、団体戦で強いチームを作りたいのならば、そのチームの一人ひとりの観察です。どの学校でも、長い間ペアを組んでいるにもかかわらず、お互いの観察がほとんどできていないペアが多いと感じています。テニスのダブルスでは、どちらか一人が普段どおりにプレーできなくなってしまうと、ペア全体のバランスも崩れ、調子を取り戻すことが難しくなります。頼れるのは、もう一方のパートナーしかいません。テニスでは、パートナーの調子が悪くなった時に、そのペアのコミュニケーション力が試されるのです。コミュニケーション力が優れているかどうかは、平素からお互いを観察しているかどうかにかかっています。平素からしっかりと観察ができているペアは、試合前の練習でパートナーの打球音を聴いただけで今日の調子がわかり、その日の戦術についてすぐに話し合うことができます。指導者が「コミュニケーションをとりましょう。」と言っても、大半の選手は具体的にどのようにしたらいいのかがわからないようです。しかし、「ペアや友人をしっかり観察して、良いところを誉めてあげましょう。」と話すと、選手達はすべきことを理解し、それをすぐに実行します。結果として、どの学校でも技術力が大きく向上しました。

この観察から始めるという行為は、テニス等のスポーツだけでなく、人間関係づくりやクラス運営など、様々な教育活動のベースだと言っても過言ではありません。子供達一人ひとりを観察して個々の良さを発見し、そのことを丁寧に伝えたり、更に高い目標を示唆したりすることによって、子供達は伸びていくのではないでしょうか。良きコミュニケーションは綿密な観察から始まるということを、私達教員は認識しなくてはならないと思います。私は、真摯に生徒観察に取り組むことが良きコミュニケーションへと発展し、更には優れた教育活動につながっていくということを、これからも多くの先生方に伝えていきたいと考えています。そして、私自身もずっと生徒観察のプロをめざし続けたいと思います。

 

 

 

 

(平成29年4月投稿)

 

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