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平成21年 (2009年) 7月 3日

教育ちょっといい話 第36回

山口県立徳山商工高等学校 校長 伊藤 健司

「教え子の夢」

 

「先生、この部品を使ってロボットを作ろうよ。」

高校2年生のある生徒が、工業高校の機械工場をあちこち探し回り、ある部品を持って、意気揚々と実習室に戻ってきた。スチール製の歯車を組み合わせたかなり重い部品であった。

「どういう機構を考えているんだ。」

待っていましたとばかり、得意げに説明を始めた。その生徒に何かきらりと光るものを感じた瞬間であった。

今から14年前、ロボット競技大会に出場するロボットを有志で製作しているときのことであった。競技の内容は、制限時間内に、床にあるテニスボールをバスケットボールのゴールのようなかごに入れるというものであった。他の生徒たちは、初めてのロボット製作なのでなかなかアイデアが出ず、行き詰まっていた時のその生徒の発言であった。

その生徒は、指示を待つまでもなく、旋盤で部品を製作してきたり、精度が悪いと言って作り替えてきたりと、言葉の節々に「妥協は絶対しない」と言わんばかりの意気込みがあった。感心する行動であった。

完成したロボットは、試合ではアイデア賞を受賞したものの2回戦で敗退した。思ったような成績が上げられなかったのが相当悔しかったのか、来年は絶対優勝すると誓っていたのが印象的であった。

その生徒は、将来の夢をいくつも持っていた。いくつもの夢を実現するために、いろいろなことに挑戦したが、最終的には教員の道を選んだ。教員になった1年目から指導者としてロボット製作に関わり、目標は全国優勝と言っていた。そして、ついに今年の全国高等学校ロボット競技大会で、念願の全国優勝を成し遂げた。彼の夢が叶った瞬間である。

「先生、この部品を使ってロボットを作ろうよ。」と言った14年前の彼のこの言葉、手に持っていた部品、妥協は絶対しないという気持ちが、彼のロボットづくりの原点だったように私には思えるのである。

 

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