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平成21年 (2009年) 11月 17日

教育ちょっといい話 第51回

下関市立楢崎小学校 校長 杉本 節子

「帰っていける場所」

 

もう30歳を超える教え子たちが同窓会を開いてくれた。今回は私からの提案で、同学年の2クラス合同で行った。というのは、当時大変な学年で、まだ20代だったU先生と交換授業などしながら2人で2クラスを見ようとがんばった1年間だったからだ。

U学級には、N君というボスと彼を取り巻く何人かの男子がいた。若いU先生は、時間を見つけてはN君をはじめクラスの男子とサッカーをしたりドッジボールをしたり、とにかくよく遊んでいた。反面、悪いことをした時には厳しく、とことん注意することもあった。

持久走大会が近づくと、U先生はN君に自信をつけさせようと特訓を始めた。N君もU先生について毎日がんばって走った。そして当日、毎年1位のわがクラスの子を抜き、僅差でN君が1位となった。

そんな思い出のあるクラスであったが、U先生のクラスは、それまでクラス会をしたことがなかったのだ。会場へ行く間も、U先生は「ぼくは、ひどかったからみんなに責められるかもしれない。」と、彼らとの再会をちょっぴり不安に感じていたようだ。

会が始まり、一人一人の近況報告兼思い出披露となった。N君の番がきた。U先生の顔が心なしか引きつっている。

「ぼくは、よく、U先生にこっぴどくしかられました。けれど、毎日が本当に楽しかった です。U先生は最高でした!」

これを聞いたU先生の喜びはどれほどであっただろうか。酔いが一度に回ったようであった。他の子もみな同様の思い出であった。

今もどこか世間を斜に見ている感のあるN君たちであるが、U先生との1年間は、心をさらけ出し、燃えた1年であったのだ。久しぶりに会ったU先生とともに、20数年前のあの頃に帰った子どもたち。記念写真には、U先生にほおずりしているN君の笑顔が写っている。

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