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平成22年 (2010年) 3月 16日

教育ちょっといい話 第64回

山口県立豊浦総合支援学校 校長 益田 玲子

 「バスの中の思いやり」

 

先日東京に出張があり、バスを利用する機会がありました。東京のバスはすべてローステップで大変乗りやすく、ご年配の方々も多く利用されていました。あるバス停で、ご高齢の女性が乗ってこられました。座ることができるかなと思っていた矢先に、前に座っていた若い男女のカップルがさっと席を立ち、その女性に席を譲りました。あまりに手際が良かったことと、席を譲られた女性が満面の笑みで「ありがとう。」といわれたことがその場の雰囲気を一気に和やかなものにしてくれました。雨の降る暗い朝でしたが、心が明るくなったひとときでした。また、その帰りにも、今度は若い大学生風の男性が、やはり乗ってこられたご高齢の女性に席を譲るところを見ました。最近は、知らぬふりをする人が多いのではないかと思っておりましたので、この2つの出来事は、私を優しい気持ちにさせてくれました。

後日談ですが、混み合った都電に乗っていたとき、ご年配の女性が私の傍に来られたので、すぐに席をたって「どうぞお座りください。」と言ったところ、「ごめんなさい。いまから降りるところです。」と言われてしまいました。でも、その後、その女性は私の両腕を両手で持たれて、「気にかけてくれて、本当にありがとうね。」と言ってくださいました。間の悪い行為だったのですが、なんだかとてもうれしい思いをしました。

先日新聞のコラムに、若い人が席を譲ったのに譲られた年配の方が「結構です。」と言われたので、譲った青年が気まずそうにしていたという話が載っていました。若い人のモラルのなさを言うことはたやすいですが、若い人の思いをくみ取って素直に喜ぶことが、モラルの向上につながり、世の中をより良くするのではないかと今回のことでつくづく感じました。人に喜んでもらえる経験は、かけがえのないものだと思います。わたしも、もう少し年を取って席を譲ってもらえたら、若い方に「もう一度しよう」という気持ちを持ってもらえるように、心を込めて「ありがとう」と言いたいと思っています。(平成21年7月投稿)

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