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平成22年 (2010年) 5月 8日

教育ちょっといい話 第78回

下関市立豊北中学校 校長 道上 収

 些細なことの大切さ

 

若いころに山のへき地の中学校に勤務していました。ある年の卒業文集の中に、卒業生一人ひとりの教職員に対する思い出を綴ったコーナーがありました。ある女子生徒が私への思い出として、「昼休みに、私の目の前に飛んできたソフトボールをキャッチして助けてくれました。とてもうれしく今でも忘れられません」というようなことが書いてありました。私は、初め、いつのことか、何のことか、さっぱり分かりませんでしたが、だんだんと思い出してきました。それは彼女が1年生のときのことでした。

当時、その学校では、昼休みに男女を問わず一目散にグラウンドに出て、毎日のようにソフトボールをしていました。私たち教員も生徒と一緒になって遊んでいました。その日も適当にチーム分けして、彼女がセカンド、私がショートを守っていたときのことです。相手の打者が打ったボールが彼女の顔面めがけて一直線に飛んできました。そのボールを彼女の眼前でキャッチしたことがあったのです。彼女にとって、それは避けようのないとてつもない恐怖だったのでしょう。しかし、私にとってそれはファインプレイでも何でもない、誰でもできることだったので、卒業文集を見るまで、そのことをすっかり忘れていたのです。

文集を読んで、「自分が何気なくしたことが、これほど相手の心に強く残ることもあるのだ。いやまて、いいことばかりではなく、きっと人を傷つけたこともあったに違いない。申し訳ないことをしたなぁ」と深く考えさせられたことを今でも覚えています。

日頃の何気ない言動の大切さを若い私に教えてくれたできごとでした。(平成21年7月投稿)

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