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平成21年 (2009年) 3月 25日

教育ちょっといい話 第14回

山口県ひとづくり財団常務理事兼県民学習部長  沖浦 初孝

学びについて

 

「教えないから伸びる」、読売新聞の特集「日本の知力」(平20.7.23)に掲載された宮大工の棟梁小川三夫氏の話です。

 

『教えないというのは、学ぼうという雰囲気がある中で放っておくことである。学校では生徒に学ぶ雰囲気がないからこそ、先生が教えざるを得ないのだろう。実は教える側も教えてしまった方が目先は楽だ。教えないのは忍耐がいる。教えれば30分でできることが、放っておけば2日も3日もかかる。でも、教えてしまったら弟子は教えられた範囲の事しかできない。それ以上を目指そうとは思わなくなる』とありました。

 

これを読んで私は「虚往実帰」という言葉を思い出しました。昭和五十五年四月、新南陽高校の第一回入学式で井上洋校長先生が生徒たちに示された言葉でした。辞書によると心を虚にして往けば、ものの理おのずから得られ、腹を満たして帰ることができるとあります。さらに調べて見ますと、中国の古典、荘子の徳充符第五の中で、王駘が自分では何も教えず語らないのに、空の頭でやって来た弟子たちは頭を一杯にして帰るという話の中に、虚にして往き、実にして帰るとあります。

 

私たちは知らず知らずのうちに、これでもかこれでもかというほど教え過ぎていないでしょうか。一から十まで教えることが、考える力を育む大きな障害となっているようにも思います。教える側は、学ぶ側の反応をとらえつつ、じっくりと「待つ忍耐」が必要ではないでしょうか。

 

それともう一つ。学習環境づくりも大切なことです。自分の授業だけでの問題ではないのです。学年全体、学校全体の問題なのです。私が現役時代、気を付けたことの一つに「学校がきれい」ということでした。昇降口の扉の壊れた下足箱、その上は物置と化し、教室の外壁には黒板ふきを叩いた無数の跡、窓際にだらしなくぶら下がるカーテン、廊下にはチューインガムの固まり等、どう見ても学びの場にふさわしくない光景です。その改善は気付いた時に直ぐにやることです。小さなほころびから荒れていった学校は多くあります。逆に荒れた学校が、生徒や先生の協力の下に学習環境を整えることによって蘇ったことも知っています。いろいろと苦労は多いと思いますが、先生方、頑張ってください。

 

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