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平成21年 (2009年) 3月 25日

教育ちょっといい話 第2回

山口市 山 本 哲 司

G君元気ですか

 

G君が小学2年生の1学期。G君はカレンダーが大好きで、毎朝登校するなり学校中の教室を回り、日めくりを見つけるとさっさと今日の日付にめくり直します。

 

しかし、「各クラスの係の仕事だからこまる」とブーイングが上がりました。そこで、私は、職員会で彼の気持ちを代弁し、各クラスで話題にしていただくようお願いしました。

 

しばらくすると、毎朝きちんとカレンダーをめくるクラスや、G君にめくらせてあげると待っているクラスなど、いろいろなクラスが登場しG君に声をかけてくれる子ども達も増え、G君も楽しく登校することができました。

 

そうしている内に、G君の教室巡りもなくなりました。

 

ところが実は、彼は全く話し言葉はなく、「ダダダダ」「ウー」の声やオウム返しだけでした。

 

ある時、彼が私の腕を捕まえて「ダダ」と黒板の日課表を指さすのです。彼が次の時間を気にしていると言うことはわかったのですが、それよりも「あれ、G君この字を知ってるの?」わたしもあわてました。

 

そこから、彼と私の筆談の生活の始まりでした。

 

その後、彼はお父さんの転勤で他県へ、私も転勤したのですが、それから8年くらい過ぎたある日、私が彼と電話で話すことになろうとは思っても見ませんでした。

 

電話の向こうの低音の立派な青年の声にびっくり、何を話したか覚えていないくらいでした。

 

彼は、筆談で会話していたその期間は長かったけれど、いつかは話したいと言う彼の気持ちと、彼を信じて待っていてくれた家族や周りの人達、そのおかげで、彼の心の中にはいつでも話せるように言葉が一杯一杯育っていたのでしょう。だから、彼が話せたのは突然のことではないのかもしれません。G君は私に、子どもの力を信じ将来を見据えて支援していくことの大切さを教えてくれました。

 

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