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平成21年 (2009年) 4月 16日

教育ちょっといい話 第26回

山口県立防府西高等学校 教諭 中川 聡

縁の下の力持ち

 

今から十年前、私の勤務校が創立二十周年を迎えた年の出来事である。 記念式典後のアトラクションとして山口県交響楽団の演奏会を催すことになったのだが、手狭な体育館のステージではオーケストラが入り切らず、特設のステージが必要となった。急遽、地元の製材所の協力で張り出し用の台を五十枚余り作っていただいたが、今度はそれらを支えるものがない。やむを得ず適当な部材を求めて市内の事業所をあちこち尋ねて回ることになった。

しばらく探し回った後、ようやくたどり着いたのが、市内のある大手企業が使用している資料箱であった。大きさも強度も申し分ない。担当の方に頼み込んだところ何とか二百個程分けていただけることになったので、早速放課後を使っての運搬作業を始めた。しかし見込みが甘かった。一度に自家用車に積むことのできる量は高が知れており、作業は遅々として進まない。半月経過してもなお、運び終えた数は目標の二割程度であった。

このままでは本番に間に合わない…次第に不安を感じていた矢先、伺った折にいつも倉庫を開けてくださるYさんから、突然連絡があった。「先生、うちのトラックで学校まで持って行きましょう。」何と、会社のトラックでわざわざ運んでくださるというのである。他に手段も持ち得なかったし、恐縮ながらもYさんのご厚意に甘えることにした。 翌日、学校に大きなトラックが横付けされ、中にはこれから運ぶ予定の資料箱が百数十個全て積んであった。そばには二名の作業員の方と「見ちゃいられなかったので。」と笑うYさん。大企業がここまで学校に協力してくださるなんて、いったい誰が想像しただろう。しかしそれは実際に私の目の前で起こったのである。学校はこうして社会から見守られているのだと、私は感謝の気持ちとともに体中に勇気がみなぎるのを感じた。

あれから十年。本校は無事に創立三十周年を迎えた。あの時分けていただいた資料箱は、今も縁の下の力となって生徒たちの行事を支え続けている。「創立三十周年記念式典」「全校人文字航空写真」「ピアノ開き合唱」「秋山仁先生講演会」…今年もまたこうして語り継ぐちょっといい話でいっぱいである。

 

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