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平成21年 (2009年) 5月 13日

教育ちょっといい話 第32回

山口県立田布施工業高等学校 校長 山本 達也

「走る楽しみ」

 

本校では毎年11月下旬にロードレース、いわゆるマラソン大会を実施している。男女とも約9kmの距離を、設定した時間内で走る。設定時間をオーバーした者は再レース、という厳しいものである。私の中学、高校時代の経験から、生徒たちは本番が近づくにつれ憂鬱な気分になっていくだろうな、なんとか励ませないものかな、と思っていた。

当日、開会式の挨拶で、生徒に走ることの楽しさを訴え、積極的に参加してもらおうと、次のことを伝えることとした。

1 世の中には走ることを苦痛と感じる人と、楽しみと感じる人がいる。

1 君たちには、楽しみと感じる側の人になって欲しい。

1 そのためにはどのような楽しみがあるかを知る必要があるが、次のようなことが考えられる。

・汗をかき、疲れてくる中、自分の限界に挑戦する快感

・設定した距離を走りきった、という達成感

・走り終わった後、徐々に体力が回復し、エネルギーが充満してくる快感

・御飯がおいしくなり、健康が増進される快感など

1 この他にもあるはずだから、走りながら探してみよう。見つけたら教えて欲しい。

ここで示した楽しみは、多少こじつけのようではあるが、生徒が考えたり見つけたりするヒントにはなると思った。

さて、レース後、ある生徒が自分で見つけた楽しみを報告に来た。

「走りながら、風を感じたんですよ。」

「・・・。」

私が示した楽しみは、何と物欲的・実利的なことか。生徒が教えてくれた楽しみは、何と詩的で優雅なことか。実際に走ることが好きな人たちは、私とこの生徒のどちらを支持するだろうか。改めて生徒に教えられることの多さを感じた一日であった。

 

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