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開発の経緯

開発の背景

 これからの新しい時代では、グローバル化の進展や人工知能(AI)の飛躍的進化など社会の加速度的な変化を受け止め、生きて働く「知識・技能」の習得のために必要な資質・能力を子どもたち一人ひとりに確実に育む学校教育を実現しなければならない。そうした中、教育におけるICT(情報通信技術)の活用は、子どもたちの学習への興味・関心を高め、分かりやすい授業を展開したり、目的や状況に応じて適切に情報手段を使いこなすことができる情報活用能力を育成したり、子どもたちの主体的で対話的な深い学び(いわゆる「アクティブ・ラーニング」)を実現したりする上で効果的である。そのためには、ICTを効果的に活用した授業デザインを組むことができるICT活用指導力を有した教員の養成及び研修が重要となる。日本においては「教科指導におけるICT活用」「児童生徒の情報活用能力の育成」「校務の情報化」の三つを柱として教育の情報化が推進され、そのための教員研修が行われている。
 しかし、研修を受けた教員の多くは、個人の資質向上は図られるものの、学校全体へのICT活用指導力の向上を図るには至っていないのが現状である。その要因として「学校の実態に応じた校内研修が行われていないこと」や「実際の授業を想定し、検討するような協働的な研修とならなかったため、教員一人ひとりの授業実践に結び付かなかったこと」などが考えられる。また、教科に係る研修であれば、研修主任や教科主任がリーダーとなって校内研修を推進していくことができるが、ICTに係る研修となると、比較的新しい教育技術であることやその専門性から校内に研修を推進する教員がおらず、校内研修を学校が主体となり、継続的に進めるのが困難であることも要因である。
 このような実態から、ICTの活用を推し進めるには、場当たり的な支援だけでなく、学校が主体的・継続的にICTに関する研修会を自校の教員で運営できるような研修プログラムが必要であると考えた。
 そのためには、学校の実態や状況変化に柔軟に対応でき、ICT活用の効果を実感できる協働的な活動を取り入れた研修プログラムの構築が必要不可欠であり、その解決策の一つとして、ICT活用指導力の基準を策定すること、そして研修プログラムをカスタマイズできるモジュール(20分程度で研修が実施できる単位)として開発することが有効であると考えた。
 さらに、教員養成を担う山口大学教育学部と連携して、研修プログラムの開発やICT活用指導力との関係性を検討し、共有することによって、教師として必要なICT活用に関する資質や能力の育成に係る内容を大学のカリキュラムや授業に反映することができるようになる。それに応じて、教員研修における研修の高度化が図られることが期待できる。そして、これらICT活用指導力に関する教員養成と教員研修を一体化することで、教員全体の質的向上に資すると考えられる。
 以上のことから、山口大学教育学部と連携して、教員研修においても、教員養成段階においても活用可能なモジュール型の研修プログラムの開発を行うこととした。

開発の目的

 前述の背景に鑑み、開発の目的を次のように設定した。

 各学校の校内研修、やまぐち総合教育支援センターの研修及び大学における教員養成等で主体的・継続的に用いることができるモジュール型ICT活用研修プログラムを山口大学教育学部と連携して開発し、教員等のICT活用指導力の向上を図る。

開発の方法

 

 本研修プログラムを開発するに当たり、やまぐち総合教育支援センターと山口大学教育学部で構成する「教育の情報化プロジェクト会議」において研修プログラム作成担当者会議を組織する。その会議でやまぐち総合教育支援センターが作る本研修プログラムを検討して効果や汎用性の高いものにしていくこととする。
 また、開発した本研修プログラムの効果を検証し、フィードバックを受けるために以下の教育機関や研修講座において試行及び検証をすることとする。

(1) 調査研究校における試行及び検証
 やまぐち総合教育支援センターの調査研究として、山口県内の小学校1校、中学校1校、高等学校1校の3校を調査研究校に選定し、年間を通して本研修プログラムを校内研修等で実施してもらう。実施後のアンケートや聞き取り調査から本研修プログラムを修正していく。また、文部科学省から指標として示されている「教員のICT活用指導力チェックリスト」を使用して、ICT活用指導力の向上を検証する。

(2) ICT活用推進研修講座における試行及び検証
 小学校・中学校・高等学校・特別支援学校の教員を対象にしたICT活用推進研修講座(リーダー養成)を2期にわたって実施する。1期では、本研修プログラムの体験やそれを使った校内研修の進め方などの講義・実習をし、各学校で本研修プログラムを使った校内研修を実施してもらうこととした。2期では、本研修プログラムを使った校内研修について研究協議を実施し、学校現場での感想や意見を聞き取ることとした。

(3) 山口大学教育学部での講義における試行及び検証
 山口大学教育学部の教員養成課程において本研修プログラムを使った講義を実施し、大学講義で活用する効果や課題を検証する。また、教員研修と教員養成課程との連動及び一体化についても検証することとする。

開発組織

 本研修プログラムは山口大学教育学部と連携して開発することとしているが、すでに平成27年度からやまぐち総合教育支援センターと山口大学教育学部の連携事業として「教育の情報化推進プロジェクト」を実施してきている。そこでは、「教育の情報化」に関連する取組の情報提供や意見交換、ICT活用指導力に関連する指導力基準及びその基準に対応した養成・研修方法の在り方についての検討を行ってきた。
 今年度は、本研修プログラムを開発するに当たり、「研修プログラム担当者会議」を立ち上げ、その中で以下の三つのサブグループをつくり、具体的に開発を進めることとした。

【開発組織図】


(1) ICT活用指導力サブグループ
 本研修プログラムの各モジュールとICT活用指導力の関係性を明らかにし、本研修プログラムを受講することでどのようなICT活用指導力が身に付くのかを把握できる指標を作成する。

(2) 研修モジュール開発サブグループ
 研修モジュールの開発にあたるとともに、調査研究協力校ややまぐち総合教育支援センターの研修講座等で試行実施した結果を踏まえ、モジュールの改修、改善を行う。

(3) 指導カリキュラムサブグループ
 山口大学教育学部の教員養成課程において本研修プログラムを活用した講義を行うに当たり、本研修プログラムを活用した大学のカリキュラムを策定する。

やまぐち総合教育支援センター
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