1.はじめに

 複式授業においてわかる授業を展開するためには、直接、間接指導にかかわらず話し合いの仕方の工夫が重要な役割を果たします。本事例は、国語科において、話し合い活動を取り入れた共学びの場を設定したものです。
 3年生では、各自がデジタルカメラで取材し、壁新聞に掲載する題材を話し合いで決定し、できあがった各自の文章の推敲を互いに助言しながら全員で行っています。4年生では、よりよいスピーチにしていくために、「スピーチ応援団」という練習過程を取り入れ、話の内容や順序、話し方について互いに助言し合うようにしています。


 2.単元の目標

3 年
(1)  見たものを詳しくメモし、筋道を立てて文章の組み立てを考えることができる。
(2)  色、形、動きなどを表現する言葉を考えて、様子がよくわかる作文を書くことができる。
(3)  作文を集めて壁新聞にすることができる。
4 年
(1)  身近な出来事の中から、最も知らせたいことを選び、わかりやすく伝えることができる。
(2)  知らせたいことの内容と順序を整理し、必要なことを伝えることができる。
(3)  声の大きさや話す速さに気をつけ、間の取り方を工夫することができる。
 
 3.単元指導計画

3 年 (14時間)
(1・2)  学習の見通しやめあてをもとう
(3)  すてきな「おきうら小」を見つけよう
(4)  全校のみんなに何を知らせるか決めよう 【本 時】
(5)  知らせる中身をまとめよう
(6)  壁新聞の作り方をさぐろう
(7・8)  わかりやすい文章にまとめよう
(9・10)  様子がわかるように書こう
(11・12)  作文を修正しよう
(13・14)  壁新聞づくりと発表
     
4 年 (9時間)
(1・2)  学習の見通しやめあてをもとう
(3)   「おきうら」でのあんなことこんなことを知らせよう
(4)  友だちのスピーチ原稿をおうえんしよう 【本 時】
(5)  わかりやすい原稿にしよう
(6・7)  わかりやすい話し方を工夫しよう
(8・9)  スピーチ大会をしよう

 4.授業の実際
本時学習の流れ
前時に、各自がデジタルカメラで取材した自分の写真(3枚程度)を机の上に出し、写真をもとにスケッチの対象を話し合いによって決めました。

 3名という少人数なので、簡単にスケッチの対象が決まりました。自分の意見を主張させるためには、教師も児童役になって、意見を出すことが重要だと気付きました。
見つけた知らせる中身を自分なりの言葉で、ワークシートにまとめました。

 一人学びの学習形態ですが、同じテーブルで学習するので、まとめ方についてわからないことがあれば、お互いに助言することができるよさがあります。
取材したことのまとめ
原稿を自分で見直し、スピーチメモ用紙にある「時、場所、人物、どうした」や「いちばん言いたいこと」がはっきりしているか、「思ったり、考えたりしたこと」が書かれているかを見直しのポイントとしてあげ、スピーチの練習をしました。

 原稿の見直しのポイントを明確にしておくことで、一人学びの学習の効果をあげ、次の共学びの過程にスムーズにつなげることができました。
原稿の見直しと練習
友だちのスピーチを聞き、スピーチメモ用紙の項目に沿って話の内容や順序など助言したいことを書きました。

 スピーチメモ用紙を準備したことで、スピーチを聞いたり、助言したりする視点が明確になり、話し合いが活発になりました。
 また、「スピーチ応援団」という名前をつけたことで、友だちの助言を抵抗なく受け止めることができたように思います。
スピーチ応援団
■指導案はこちらから
■プリント・・・スケッチしたいこと  スピーチメモ  スピーチ原稿
          
 5.おわりに

 複式指導では、教師が直接指導できない場面で自分で考えたり、みんなで話し合ったりしていく場面がでてきます。1時間の授業の中で、どのように学習していけばよいかわからないと、活動が止まってしまいます。
 あらかじめ授業の流れを児童に知らせ、手順がよく理解できた上で活動に移ることが大切であることは言うまでもありません。
 その手だてとして、ワークシートを準備したり、本時の流れを板書しておいたり、学習カードに手順を書いたりしておくと無駄が無く、効果的に授業が進められます。

 3年生の学習では、どのような内容の壁新聞にするか各自3枚写真を撮らせました。建物、動物、植物などの写真があり、その中から壁新聞の題材にするものを話し合いで選ばせました。3年生は、自己主張が強いので、題材を1つに絞るのはむずかしいと予想しておりましたが、すんなりと題材が決定してしまいました。少人数の中で、もう少し深く互いに自分の意見を出し合わせるためには、教師の言葉かけが必要であると感じました。

 4年生の学習では、自分が書いたスピーチ原稿を友達に聞いてもらい、友達は、「スピーチ応援団」として原稿の内容をアドバイスしました。「時、場所、人物、どうした、考えたこと・思ったこと」が内容に含まれているかどうか、スピーチを聞いての感想を意見交換させ、人とのかかわりを深めさせました。意見が出にくい時は、教師が「スピーチ応援団」として、意見を出しました。
 また、自分の原稿をすぐに自分で直すのではなく、みんなで回し読みさせ、互いに助言し合い、できたところで教師が登場して助言していくと、より推敲度が高められるのではないかと思います。
 
 


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