令和元年度 山口県学校美術展 審査講評

 幼保

    [平面]
  • 年少・年長共に、年齢に合った描画材料で子どもの思いを率直に表わしている作品が多くみられた。スチレン版画の作品なども出品されており、幅広い作品を推奨していきたい。
  • 題材に広がりが見られ、身近な生活の中での経験や体験から描いている作品が多く出品されており、よい傾向である。
  • 年長では、自分なりのイメージをふくらませながら細かな部分までこだわった表現をした「お話の絵」が見られた。
    [立体]
  • 個人作品については、子どもが作りたいことがよくわかり、子ども自身が楽しんでいる様子が感じられる作品が見られ、好感がもてた。子ども同士が、作りたいイメージに向けて、楽しくかかわりおしゃべりをしている様子が感じられる作品もあった。
  • これまでは大きな共同製作が出品される傾向があったが、今後は製作活動の中で、子どもの思いを生かしながら、自らが題材や材料を選んでやりたいことが実現でき、達成感や満足感が味わえるような支援が必要と思われる。

 小学校

    [低学年・平面]
  • 多様な作品が増えており、その子ならではの体験(学校生活の些細な出来事や動物とのかかわり)を素直に表している作品が見られた。版画作品や地域ならではの題材や学校の特色を生かした題材の作品も増えてきている。
  • 教科書の題材を扱っているものについては、指導のねらいが明確であり、子どもの発想を豊かに引き出している作品が多くみられた。また、表したいものに合わせて適切な描画材料の選択がなされていた。
  • 表したいことをのびのびと大きく表している作品や、人物の一人ひとりの表情や動作が丁寧に描かれ、子どものつぶやきが聞こえてくような作品があった。
    [中学年・平面]
  • 自分が表現したいことが伝わるための構図の工夫が見られた。また、余り描きこみすぎず、空間のよさを生かし、効果的に表現している作品もあった。
  • 描画材料が多様になり、表現したい対象に合わせて効果的に使われていた。絵の具の扱い方では、透明感のある表現や美しい混色が増え、授業の中で絵の具の使い方の指導が丁寧に行われている様子が伺えた。
  • 写真を参考にして構図を考える場合も、あくまで参考とし、自分なりの表現を楽しむことができるよう指導の工夫をする必要がある。また、自分が表現したいことや思いが、作品名に表れるとよい。
    [高学年・平面]
  • 高学年で身に付けておくべき技法や描画材料の使い方が生きており、色づかいがきれいで淡い色の中でもしっかりと表現できている絵が目立った。
  • 6年生では、学校の校舎や教室を描いた題材が多かった。卒業していく学校への思いが、机や廊下、靴箱を描く表現に表れていた。
  • 神社や地域行事を描いた絵が増えている。子どもたちが、地域と向き合い、地域の愛着を深めることにつながっていくものと思われる。絵を描くこと通して、地域連携についても積極的に考えていけるとよい。
  • 思いをもって描かれた作品には、様々なこだわりが見受けられ、そうした思いを作品の中の色や形から読み取っていくことが大切である。
    [低学年・立体]
  • 自分で集めた箱を組み合わせた作品などがあり、とても楽しんで作品を作っていることが伝わった。児童のひらめきが生かされていた。
  • 実際に動物やオブジェを見ることから心を動かされ、作品に発展しているものがあった。実体験から発想を広げ、作品に生かしている作品であった。
  • 共同製作では、作品からどういう世界を作るのかみんなで話し合っている様子が垣間見える作品であった。
  • 子どもの思いを表すために、どのような材料や方法が適切かを検討し準備をしておく必要を感じた。低学年では接着方法等に課題が見られた。
    [中学年・立体]
  • 動物の焼き物では、体のねじり方など動きをしっかりと表現できている作品が見られた。
  • 材料をうまく加工し、大きな口を表現するなど素材を生かした表現があった。
  • ストーリー性のある作品が見られ、児童が楽しくお話を考えながら作った様子が感じられた。
  • 落ち葉などの身近な材料を独創的に使っている作品が見られた。
  • 既製品の製作キットや飾りを使う作品が増えてきているが、自分がつくるということや自らが材料を選ぶということを大切にしてほしい。
    [高学年・立体]
  • 段ボールを材料とした作品では、段ボールの表面をはがして使うなど、材料の使い方を工夫していたり、接着もテープではなく接着剤を使って美しく接着したりするなど、こだわりが感じられた。
  • 著名な芸術家の作品を鑑賞した後、発想を膨らませ共同製作している作品があった。それぞれの思いが一つひとつのパーツに表れていた。

 中学校

    [平面]
  • 学校ごとに特色があり、各校における授業の様子がよく伝わってきた。
  • 全学年とも、写実的な作品はしっかりと描かれ見ごたえがあった。抽象的な作品や構想画、平面構成、アニメなどは、出品数自体が少なかった。一瞬を切りとる写実的な作品と、長い時間や概念、思いを表現する抽象的な作品がどちらも充実するとよい。
  • 写真をもとにしたと思われる作品が多く見られた。素敵な作品も多いが、作者の意図が伝わりにくい作品も見られた、写真をもとにすると、線や色の迷いが消えるが、その迷いのある線などの中に、作者の温もりが現れてくることも大切にしてほしい。
  • 名票については、しっかりと「作者の思い」の部分を記載し、制作意図がわかるようにするとよい。「作者の思い」を大切に作品を見ていきたい。
    [立体]
  • 身近にある物、動きのある人体、動物、果物、巻貝などの、形や色、素材感を観察し、その特徴を表現した作品が見られた。
  • ランプシェードや写真たてなど生活の中で使うものを様々な素材で作り、使いやすさや組み立て方の面白さ、装飾を工夫して表したものが多く見られた。
  • 日頃の授業で、学習指導要領に示されている指導内容を追求する学習活動が実践されていることが伺えた。
  • 形や色、素材感などを抽象的に扱い表現する作品が例年出品されているが、一部の地域に留まっているようである。多くの学校が参考にしてほしい。
  • デザイン的な思考をもとに表した作品や、用途や機能を考え表す作品については、材料や用具の準備、作品管理に苦労すると思われるが、美術表現が社会の中で大切な役割を担っていることを学べるように、時間を確保して取り組む必要がある。

 特別支援学校

  • 大胆な筆づかいの作品や、緻密に描きこんだ作品など、多様な表現方法や技法が見られた。
  • 適切な支援と指導により、子どもらしく本人が表現したいものを引き出している作品が多く見られた。
  • 受賞作品は、心象表現や抽象表現、写実表現などの様々な表現や、多様な材料等をつかった様々な表現形態があり、それぞれの良さが感じられた。

 高等学校

  • 様々な作品が出品され、高校生の感性が多様な技法によって表現されていた。自らの表現を懸命に追求した素晴らしい作品が多く出品されていた。
  • 発想面では、今どきのライフスタイルを感じさせる作品もあれば、じっくりと観察して創り出した作品もあり、バラエティに富んでいた。
  • 作者の考えや想いが作品にどれだけ強く表出されるかが、作品のよさや強みになると感じる。そのためには、材料を工夫したり、技法を考えたり、時間をかけて作品に向き合う必要がある。その過程が、作品に力を与えることになると考える。
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