実 践
小学校算数: 図形についての感覚を豊かにする  5年
〜身の回りにある幾何模様などの図形的な美しさに気付くことができる〜
1 学年及び単元名
第5学年 自分だけのしきつめ模様を作ろう
2 単元のねらい
 身の回りにある敷き詰め模様探しを通して、正方形や長方形以外の図形が敷き詰め模様として生活に生かされていることを知るとともに、基本図形や簡単な基本図形の合成・変形によりできた図形で敷き詰め模様を作り、その不思議さや美しさを味わう。(※単元の評価規準表
3 単元の設定について
 身の回りには、建物の壁や床など、正方形や長方形が敷き詰められているものをよく目にする。中には正六角形、正方形や長方形をあるきまりに従って変形しためずらしい図形を敷き詰めた模様も見られ、美しさを感じる。
 本単元では、生活の中から数理を見つけ、様々な図形が敷き詰められることのおもしろさや敷き詰められた図形の美しさを味わわせ、図形感覚を豊かにしていくことをねらいとしている。これまで学習した図形をもとに、多様な敷き詰め模様を考えていくことのできる発展性のある教材である。したがって、三角形による平面の敷き詰めなどの学習の後に位置付ける。
 トイレやビルの壁面、公園のインターロッキングなどを漠然と見ている児童にとって、それを構成している一つ一つの図形について意識し、日頃目にしている模様にも算数が大きな働きをしていることに気付けば、それは大変な驚きであろう。  
 そこで、導入では、身の回りにある敷き詰め模様を探し、日常の事象から図形を抽出し、数理的にとらえるようにする。また、意外感のある図形が敷き詰められる仕組みを考え、自分なりの敷き詰め模様を作ってみようという意欲を高める。
4 指導計画(3時間)
身の回りにあるしきつめ模様・・・・・1時間
自分だけのしきつめ模様を作ろう・・2時間★(※本時案 1/2)
5 指導事例
(1)身の回りにある敷き詰め模様探し
 身の回りにある正方形と長方形の敷き詰め模様を写真で提示し、「これは、どこの写真だと思いますか。」と問う。子どもたちは、思い思いに、「学校のトイレかな。」「野外ステージの所じゃない。」などと発言する。「実は学校のトイレと野外ステージの写真です。」と言うと、「やっぱりね。」という声。
 次に、「トイレの模様と野外ステージの模様の違いは何?」と尋ねる。日頃、何も気にせず見ていた壁だが、実は美観を考えていること、自分たちが算数で学習してきた図形でできていることに子どもたちは改めて気付くこととなる。
  「同じ形(合同な図形)が敷き詰められていること」「すきまなく平面に並べていくことが敷き詰めであること」を確認し、「このような敷き詰め模様はみんなの回りにないかな?」と投げかける。子どもたちは自信ありげに、「家の風呂。」「家の壁。」「公園。」などと発言する。その後、子どもたちはデジタルカメラを持って、身の回りの敷き詰め模様探しに出かけていった。中には、学校の周りに張り巡らされているフェンスを写真に撮り、ひし形の敷き詰めだというグループもあった。                         (※児童のみつけた敷き詰め模様例



(2)敷き詰めることのできる図形の仕組み
 これまで児童が学習した図形以外の敷き詰めの写真を提示する。子どもたちは、何の変哲もない風景にピンとこない様子。「この中に敷き詰めはないかな?」と尋ねる。「あっ、あった。」と、自信ありげに手を挙げた児童を指名すると、写真のその部分を指さしながら、「ここです。」と発表する。「どんな形が敷き詰められているのかな?」と尋ね、構成図形に目を向けさせる。この形は、平行四辺形を2つ合成してもできるし、長方形を変形してもできる。「平行四辺形がたくさん並んでいる。」「正方形や長方形だけじゃなくて、他の形でも敷き詰められるんだ。」 という声が聞かれた。

  さらに、「こんな図形は敷き詰められるかな?」と言いながら、別の図形を提示した。その図形を見るなり、子どもたちは、「犬みたい。」と叫んだ。敷き詰められるという児童と敷き詰められないという児童が半々である。敷き詰められるという児童は、「ここのとがったところが下のへこんだところとぴったり合う。
 出っ張っているところとへこんでいるところが合いそう。」と説明をする。同じ図形を並べて、敷き詰められることを確認する。意外な図形 が敷き詰められることに驚きの表情の児童もおり、敷き詰めに対する意欲は十分である。
   そこで、「自分だけの敷き詰め模様を作ろう」と投げかける。小さな長方形の方眼用紙を数枚渡し、その中に敷き詰めることのできる図形を描いていくよう告げた。いくつも同じ形を作って敷き詰められるかどうかを確認することは大変であるので、一つだけ作って、それを紙に写し取って確認するように告げた。子どもたちは、ものさしで勝手な図形を描いていくが、なかなか敷き詰めることのできる図形にならない。そんな中、ゲームのテトリスを想像し、正方形をいくつかくっつけて形を作っている児童がいた。また、適当に描いた四角形が敷き詰められたという児童もいた。(三角形や四角形ならどんな形でも敷き詰められる。※敷き詰めることのできる図形)試行錯誤しながら考えている活動にストップをかけ、それらの児童の図形を紹介した。
 その後、子どもたちが犬と呼んだ図形をもう一度提示した。「これは四角形でもないし、正方形を組み合わせたわけでもないし。」と悩む児童。「上のとがっているところと下のへこんだところは形が同じ。右の出っ張っているところと左のへこんでいるところも形が同じだ。」と一人の児童が発言すると、他の児童が、「出っ張っているところをもとに戻すと、正方形になる。」と言う。そうかという表情を見せる児童もいたが、浮かぬ表情の児童もいる。出っ張っている部分を切り取り、正方形に戻してみせることで、全員の表情が明るくなった。
 その後、それぞれの活動に戻った。自分は犬が好きなので、犬の顔をイメージして作ったという児童。一見、敷き詰められそうだが、出っ張った部分とへこんだ部分の形が合っていない。少しずれているため敷き詰められないことを自分で確認し、ものさしで正確に測って、修正を加えていった。子どもたちは、これまでとは違う発想で、様々な形を作っていた。中には、基となる図形を直線で切り取るのではなく、曲線で切り取る児童も現れた。「今度は絶対敷き詰められるぞ。」と自信満々の顔で、白い紙に写し取って確認する姿が見られた。
 このような試行錯誤による活動の中から、三角形や四角形はどんな形でも敷き詰められること、三角形や四角形などの基本図形を変形していけば敷き詰められる図形ができること、基本図形を合成しても敷き詰められる図形ができることを見つけていった。
 次の時間には色画用紙を使って敷き詰め模様を完成させることを告げ、本時を終えた。 
(3)敷き詰め模様作り
 本時で考えた型紙をもとに、敷き詰め模様を作っていった。色画用紙は、緑と黄色にし、それらを交互に並べるようにした。そうすることで、一つ一つの図形がはっきり分かるし、とても美しく見える。
 できた作品を児童に見せると、「亀のような形が並んでいる。」「家みたいな形が並んでいてきれい。」など、様々な感想が聞かれた。「どのようにして作ったんだろう。」と尋ねると、「長方形から三角形を切り取って、向かい合う辺にくっつけている。」「長方形から半分の円を切り取って、向かい合う辺にくっつけている。」「平行四辺形を二つくっつけている。」と、基本図形の合成や変形であることを見取ることができた。
 
 ほとんどの児童は、ある形を切り取り、それを対辺にくっつけて敷き詰められる図形を考えていたが、長方形から半円を切り取り、それを隣の辺にくっつけている児童がいた。同じ向きでは並べられないが、並べ方を工夫することで敷き詰めることができる。この作品を見ると、「わあ、並べ方がきれい。」と歓声が起きた。(※児童の作品例
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