授業の実際1:
光電池に日光を当て、作ったおもちゃ(ソーラーカー)を動かしてみる

 当初の計画では、晴れた日に、運動場に出てソーラーカーを動かす予定であった。しかし、当日は朝から曇り空で、ごくたまに雲の切れ間から日が差す程度の天気であった。晴れた日に延期しようかとも思ったが、「逆に、こんな日にやって、ソーラーカーが動かないで困ることで、光電池は太陽が出ていないとはたらくことができないことを、より深く理解できるのではないか。」と考え、予定通りソーラーカーを持って運動場に出た

 子ども達は、作ったソーラーカーを走らせたくてたまらない。「運動場に行こう。」と声をかけると、大喜びで外に出た。作ったソーラーカーがすぐに動くと信じている。
 外に出たら、さっそく地面にソーラーカーを置いた。しかし、動かない。しばらく待っていたが、空は曇っていて太陽が出ていないので、モーターが回らない。みんながっかりしていたが、そのうち少しでも明るい方向を探して、そちらに光電池を向ける子どもがでてきた。
 子ども達は、何とか動かそうと必死であった。ソーラーカーを高く掲げ、太陽に直角に光電池を向けようとする子どももでてきた。じっと空の変化を見ている子もいた。途中、少しだけ明るくなったとき、モーターが回った子がいた。「やったあ!」という歓声。それを聞いて、みんなも真似をして、ソーラーカーを高く掲げ、太陽に直角に光電池を向けた。あちこちで、「モーターが回った。」「動いた。」などの声が上がった。しかし、それもほんの一瞬であった。また、モーターは回ったが、ソーラーカーを走らせるほどの強さではなかった。
理科室に帰って、「運動場にソーラーカーを持って出てわかったこと」をノートに書かせた。
 後で、ノートを見るとどの子のノートにも、「日光が当たったときしか、モーターが回らなかった。」「ソーラーカーが動くには、太陽の光が必要だ。」などという内容の気づきが書いてあった。
 ノートの内容から光電池に日光が当たるとモーターが回るということについては、だいたい気づいているようであった。

 この時間は、「自然事象への関心・意欲・態度」の評価を行った。「科学的な思考」「自然事象についての知識・理解」については、次の時間に行った。
自然事象への関心・意欲・態度
Aと判断した子の行動の例 Bと判断した子の行動の例 Cと判断した子への指導
○光電池と空の明るい部分(太 陽のある場所)の角度が直角に なるよう調整しながら、ソーラー カーの向きを変えている。
人や建物のかげができない場所を選んで、ソーラーカーを置いている。
○空の明るい方(太陽の方)へソーラーカーを向けている。
○ソーラーカーを高くかかげている。

子どもたちの行動を見ていて、太陽が出ないからとあきらめて別のことをする子どもはいなかったし、ノートの記録からも、Cと判断した子はいなかった。次の時間に、Aと判断した子どもたちのノートを、みんなの前で紹介した。その後、どんなときにモーターはよく回るか各自予想させることで、関心や意欲を高めるようにした。
Aと判断した子のノートの例 Bと判断した子のノートの例
今日くもっているけど、ソーラーカーを外に持って出ました。最初は、ぜんぜん動きませんでした。光電池を明るい方に向けました。でも、動きませんでした。だけど、太陽がちょっとだけ出たとき、タイヤが少し回りました。太陽がかくれると、また回らなくなりました。つまり、今日みたいなくもっている日は太陽の光がないから動かないのが分かりました。今度いい天気の時、もう一度ためしてみたいです。きっとよく回ると思います。 最初は、モーターは回らなかったけど、太陽がでているときだけモーターが回りました。太陽の光がないと、光電池は動かないと思いました。

 次の授業で、(1)(2)の実験をし、日光の当たり方をいろいろ変えるとモーターの回る速さはどう変わるか調べた。
(1) 「光電池を全て隠す」「光電池を半分太陽に当てる」「光電池を全て太陽に当てる」
(2) 「光電池の向きを太陽に直角にする」「光電池の向きを太陽と平行に近い角度にする」
 また、子ども達は、光電池と日光の関係だけに目が向いているので、人工光源でもモーターが回ることも確かめた。
戻る