キーワードに気をつけて読む説明文の指導

1 単元名
だいじなところに 気をつけて読もう
〜サンゴの海の生きものたち:光村図書〜

2 単元設定の理由
<目指す児童像>
  • 平成14年度実施の山口県学力検査(小学校5年生対象)の国語で、設定通過率よりも低かったのは「読むこと」の領域の中でも、文章の構成を読みとって意味段落に分ける問題と段落の中のキーセンテンスを見つける問題であった。このことからも、文章の内容を的確に押さえながら要旨を正確に読みとる力を児童につけることが大切である。
  • 2年生の児童にとって「だいじなところに気をつけて読む。」ということは、中心語句を見つけたり段落構成図を書いたりすることが、大切な指導ではないと思う。では、この時期の児童にとって、適切な指導とはどういうことであろうか。まず、説明されている大体の順序を読みとることが大切である。さらに、問いの部分とその問いに対する答えの部分を正確に読みとり、まとめることができる力をつけたい。
  • 叙述にあわせて、自分で説明したり動いたりする活動を取り入れることで、楽しく学習できるだけでなく、読み取った内容をさらに確かなものとすることができる。
  • 児童は、様々な学習を通して未知の事柄と出会い経験していく。その情報を受け身で得ていくのではなく、自分から進んで調べようとし、調べて分かったことや思ったことを積極的に発信できるような知的好奇心をかき立てる指導が大切である。

<教材観>
  • 珊瑚礁の海に暮らす生き物たちの共生について説明している文章である。「たがいにやくに立つようにかかわり合ってくらしている。」とあって、この言葉が本教材のキーワードとなっている。
  • 「どんな生きものたちが、どんなかかわり合いをしているのでしょうか。」と続く文章が、教材を読み解く問いの役割を果たしている。
  • 文章は4つの意味段落で構成されており、わかりやすい。1つ目が、話題提示。2つ目が具体例1(クマノミとイソギンチャク)。3つ目が具体例2(ホンソメワケベラと大きな魚)4つ目がまとめとなっている。
  • 具体例として述べられている生き物たちの体の仕組みと、そのことによって、お互いがどのような利益を得ているかということが、順序よく説明されており、初めて知る生き物の名前や専門用語が多く出ているにもかかわらず、2年生の児童にも理解しやすい教材である。
  • 教材文と共に、鮮明で印象的な写真が使われているのも本教材の特徴である。児童の心を沖縄の珊瑚礁の世界へ引き込んでいく。また、写真を見て、想像をふくらませたり、文章の大体を理解するのにも有効である。
  • 1学期に「たんぽぽのちえ」という説明文で、植物の種の保存の知恵を知り、植物のすばらしい不思議に児童は知的好奇心を揺さぶられた。
  • 今回は、さらに未知のことだらけの海の生き物の世界について、紹介されている。生き物たちのお互いに助け合って生きていく知恵を知り、知的好奇心をかき立てながら新しい情報を得ていくことができる教材である。
  • 主教材で読み取ったことを生かして、図書室や地域の図書館で、他の生き物について読み、それを友達に紹介するような活動へ発展する単元作りができる。つまり、説明文の読みとりからも、読書活動を広げることが可能である。また、図書室を情報センターとして活用することができる。



<指導観>
  • 本教材「サンゴの海の生きものたち」は、イソギンチャクとクマノミ、ホンソメワケベラと大きな魚が、「たがいにどんな役に立ちながら、かかわり合いをしているのでしょうか。」という問いと、それぞれの生き物の体の特長や仕組み、共生する理由や工夫を説明している。
  • この文章の特徴をふまえ、本単元では、問いかけの文と答えの文に着目して、説明してある事柄をとらえる力を基礎的な読みの力と考え、この力をつけるように学習展開を工夫した。
  • 第1次では、単元の学習に興味をもつよう、沖縄の写真や魚の写真をたくさん見せ、児童の想像や経験をふくらませる。第2次では、主教材を問いと答えの文に着目して読みとり、読み取ったことをもとに、生き物になりきって自分の体のことを説明したり、実際に動いてみたり(動作化)、また、相手の生き物のいいところをスピーチしたりして、読み取った内容を確かなものとする。そして、第3次では、生き物たちになって、関わり合っている相手にお礼の手紙を書く。文章の記述に合わせて、繰り返し話したり、書いたりすることで、教材を読み返すことができ、読みが深まってくる。さらに、第4次では、図書室で自分が興味を持った生き物についての本を読む。
  • 主教材で学んだ書き表し方をもとにして、「生き物の特長」「それがどんなことに役  立つのか」「自分の考え」を自分なりに表現し、紹介し合う展開を考えた。
  • 一人一人に確かな言語能力を培うためには、児童の興味関心が高まるような学習展開を工夫すると共に、個に応じた指導支援が大切である。そのために、本単元では、難易度を考慮したワークシートを3種類用意し、児童が選択して活用できるようにした。
  • 発展教材では、児童一人一人が、十分興味を持って生き物の暮らしが調べられるように、一人一冊以上は本を集める。図書室の生き物の本や図鑑のピックアップ、地域の図書館への協力依頼、児童が家庭で持っている本の持ち寄りなどを実施した。
  • ペープサートやフリップを用意して、スピーチしたり聞き手と対話したりしながら、自分の調べたことを生き生きと表現できるようにする。
3 単元の目標
生き物のくらしに興味を持ち、進んで他の生き物についても調べようとする。
読み取ったことをもとに、ペープサートやフリップを使って、友達と対話したり、スピーチしたりすることができる。
登場した生き物になって、助け合っている相手の生き物へお礼の手紙を書くことができる。
写真と説明を結びつけながら、生き物の共生について、事柄の大体を読むことができる。
文末表現に注意して、読み取ることができる。


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