授業の実際1:3つの水よう液には、何が溶けているのだろう |
本時は、単元の導入として、3つの水溶液に何が溶けているのか、既習の経験を生かして探る学習をした。水溶液は、食塩水と、炭酸水、それに塩酸を扱うことにした。食塩水はこれまでの学習で使用しているが、その既習経験を生かして、例えば水を蒸発させれば食塩が残り、他の水溶液との見分けがつくのではないかといった多面的な視点から実験を工夫することが考えられる。 炭酸水と塩酸は、いずれも気体が溶けた水溶液で、蒸発実験だけでは判別できないが、水溶液の中にはにおいのあるものやそうでないものもあることに容易に気づくと考えて取り上げることにした。また、炭酸水は、その中に溶けているものを取り出して調べていく、次の学習につながるものと考える。塩酸は、導入段階でもあるので、安全上濃度を薄くしているが、それでもにおいはかなりきつい。ここで、いろいろな水溶液を扱うにあたり、安全な使用方法についてしっかりおさえておくようにしたい。 |
1 3つの透明な 水溶液が同じ ものか考える。 |
1 炭酸水 2 食塩水 3 塩酸 の3つの水溶液を提示する。 見かけはどれも透明である が、その正体をどのような 方法で調べてみたいか、自 分なりに実験方法を考えさ せた。 3つの水溶液を班ごとに取 りに来るようにしたが、その 際スポイトの使い方や水溶 液の扱い方について説明し た。 |
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2 どんな方法で 調べればよい か話し合う。 |
まず、どんな実験方法が 考えられるか班で話し合い 、その後全体で実験方法を 確認した。 以下の方法で確かめてみ ることになった。 @においをかぐ。 A液をふる。 B蒸発させて調べる。 C冷やして調べる。 D石灰水を加える。 この他、火をつける、温め る、さわるなどの意見もあっ たが、安全を確かめないで 実験できない水溶液もある ことをみんなで確認した。 また、これまでの学習で行 った実験で生かせるものは ないかを考えるように促した。 |
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○評価 「観察・実験の技能・表現」:水溶液・リトマス紙・ガラス器具などを正しく扱い,安全 に実験することができる。 | ||||||||||||
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3 3つの水溶液について、違いをまとめる。 |
蒸発させて調べる実験では、調べる水溶液をスライドガラスにスポイトで数滴のせて、温めるようにした。 アルコールランプの火を金網でさえぎるようにして、その上でスライドガラスをあたためて蒸発させた。 食塩水を蒸発させたものは白い粉が残るが、他はほとんど何も残らないことがわかった。 子どもたちは、2の水溶液が食塩水であることがわかったと言っていた。 |
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水溶液を冷やしてみる班があった。ミョウバンを溶かした水溶液を冷やした経験から考えたのだが、結果は思ったような違いが見られなかったようだ。ただし、3の水溶液のにおいがしなくなったことに気づいたようである。 1の水溶液はふるとよくあわが出るが、2や3のように液の中にもやもやしたものが見られなかったことなどに気づく子どももいた。 |
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○評価 「科学的な思考」:蒸発させたあとに何も残らない水溶液があることから,気体に溶け た水溶液が存在することをとらえることができる。 | ||||||||
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子どもの感想 |
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既習経験を生かして水溶液の正体をさぐるという学習は、子どもにとって、興味のある学習となった。食塩水は蒸発実験によって、明らかとなったが、他の水溶液についてはそれぞれ別のものには違いないという程度まで確認できた。この3つの水溶液の特徴を表にしてまとめた上で、1と3については、気体がとけた水溶液であることを全体で確認した。気体がとけた水溶液には、においのするものとそうでないものがあることもわかったようだ。では、「どんな気体が溶けているのか調べてみよう」ということで、次時へとつなげていくことにした。 最後に、多面的な思考を生かした実験学習を計画するにあたり、特に導入段階として気をつけたいことは、水溶液に直接ふれてはならないことや、扱いには気をつけることなど、単元を通して実験に必要な約束事をしっかりおさえておくことである。 |