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平成28年 (2016年) 9月 30日

教育ちょっといい話 第167回

山口県立下関南総合支援学校 校長 大野 浩光

「共に生きる」考 ―二つの場所から―

1 下関南総合支援学校で

共生社会の形成に向けては、障害者の権利に関する条約に基づくインクルーシブ教育システムの理念が重要であり、その構築のため、特別支援教育を着実に進めていく必要があるとされている。

こうした中、特別支援学校である本校の日常には、次のような場面がある。

・肢体不自由の生徒が乗る車いすを、知的障害等の生徒が押して援助している。

・視覚障害の児童生徒を誘導する際、病弱や知的障害等の生徒が自分の肘を差し出して握ってもらい、手引きしている。

・聴覚障害の児童生徒が、校歌を手話で歌っている。それを見た他の障害の生徒が、手話を覚えようと頑張っている。

等々である。

身近な地域で、それぞれの教育的ニーズに応じた専門的な教育を、という理念の下で行われた総合支援学校への移行であったが、障害のある者と障害のある者が「共に生きる」インクルーシブ教育システムにつながっている。

 

2 五島列島(長崎県)で

五島列島には、「共に生きる」ことがかなわなかった悲しい歴史をもつ幾多の教会堂がある。その列島の中にある奈留島でお会いした教会守の方の話が心に残る。

「世界遺産の候補にもなり、訪問者は増えた。しかし、その多くは記念写真を撮って帰るだけ。寺や神社に参拝した時は、皆お祈りをするのにね。ここは観光地としか思われていない。教会堂は、本来『祈りの場』なのに。今も、本当に共に生きていると言えるだろうか。」

 

「共に生きる」、その対象は多岐にわたる。しかし、「共に生きる」、そのための共通項は、他者(相手)を理解すること、思いやりの心を持つこと。「共に生きる」ための真理を改めて教えられた。

 

(平成28年9月投稿)

 

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